刻の監視者2.5(・・? / ねこまたぎ 忍者ブログ

ねこまたぎ

「木葉日」の徒然

entry_top_w.png
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

entry_bottom_w.png
entry_top_w.png
※映画『TIME』ネタでカカイル。カカシ視点で2、3と時系列がかぶります。
つい書いてしまっていた先輩さん視点をどうしようかと迷走中。

 カカシは忍刀、手甲の順に外して床に転がした。
 左腕の袖をたくし上げる。前腕の内側、上皮を透かしチャクラで光る数字が明滅している。故郷の隠れ里に忍びとして登録した日から動き出した体内時計だ。数値はチャクラの残量であり、生の残りだ。決して止まることはない。自分が今何をしていようが、たとえ眠っている間でも確実に減り続ける余命そのものだった。
 カカシは自分の生の残量を眺めながら注文したラーメンを待った。そう、任務中のくせになぜかラーメン屋にいる。中忍になってまだ一年目の、うみのイルカに誘われたのだ。美味しいラーメン屋があるから、と。
 思わぬ展開に半分困惑しながら、考えてみればこれも任務のうちかと自分を納得させる。さぼっているわけではなく、任務の中で起きた不可抗力だ。今月中はうみのイルカを見張れと言われているのだから。そのイルカがラーメン屋に行くのだから、カカシも後をつけて当然なのだ。
 否、カウンター席にイルカと横並びに座っている現状は尾行や粛正とははなはだかけ離れている。イルカがあまりなチャクラの無駄遣いをすれば、少し脅かすつもりで張り付いていたのに、和やかに笑いかけられて調子が狂う。カカシはイルカに御冷やのコップを持たされたり箸を並べてもらったりと、世話がやけると思っていた相手に世話をやかれているのであった。
 どうやらイルカはこのラーメン屋の常連らしく、セルフサービスの冷水機の水の出が三日前から悪かったことを、店主とともに話題にしていた。店内は夕食の時間にはまだまだ早いため空いている時間なのだろう、客がカカシとイルカ、二人きりだ。
カカシも里内一、美味いラーメンを出すこの『一楽』という店舗を知らないわけではなかった。何度か過去に食べに来た事がある。そう、昔、もっと子供の頃、初めてうみのイルカを見知ったあの日、街中で嗅いだ美味そうな匂いはずっと気になっていて、確かひと月は経たないうちに暖簾をくぐったと思う。
「はい味噌チャーシュー二人前、おまち」
 店主の掛け声とともに盛大に湯気の立つラーメンが二つ並んだ。カカシはラーメンを食べるべく、面を取って足元に転がしておいた忍具の真上にさらに放った。ふと感じた視線に顔をあげると、イルカが右横でポカンと自分を見ている。
「あの、先輩さん、いいんですか? お面こんなとこで外して」
「面外さなきゃ食えない」
「いや、外さないで食べられるかなって」
「物理的に無理だろ」
 言って割り箸を二つに裂く。イルカはカカシより二秒遅れて箸を割ったが、眼はまだカカシを凝視している。
「なに?」
「いえ、団子屋でも此処でも、外さないで食べてる暗部のひと見たことあるから」
「それは外してないように見せてるだけだろう」
「うんだから、先輩さんもそうするのかと……」
 不思議そうに自分の横顔を眺めてくるイルカの両目が、さっきからまったく瞬きをしない。瞼を極限まで開いているのか黒い目玉がやけに大きく視えた。
「見せても見せなくてもどっちでも。俺は見た奴が覚えていられないようにしてるから」
ラーメン屋の店主は暗部が面を堂々と外しても驚いた様子は見せない。現時点では見覚えのある客だと認識しているに過ぎないからだ。ただ、カシの顔を記憶野では決して回想することはできないだろう。
「それも高等な幻術?」
 中忍の問いに付属する、裏を察してカカシは答えた。
「幻術と暗示のアレンジ。やり方によるけど、二時間程度」
 イルカはカシの発言に随分と驚いたらしい。ガタン、と椅子を鳴らし立ち上がっている。
「外でラーメン食べるだけなのに百二十分もなくなるの? その術高すぎるよ! ラーメン代が二十分なのに」
 座った位置から仰いだ。イルカのみるみる蒼ざめる様が滑稽だった。確かにたった二十分の代価の食べ物を食すため、その六倍ものチャクラを費やすのは賢くないかもしれない。
「あ、あの誘っといてなんだけど、ごめんなさいすみません」
「俺のチャクラ消費に対して謝ってんの?」
 慌てる理由を察して訊くと的中である。頷いたイルカの顔つきは真剣そのものだった。
「俺は暗部の人はみんな時間持ちだからって頭でいたけど、人前で飯食うことがどれだけ消費するかまで考えてなかったです。すみません」
「じゃーいいかげんラーメン食っていい? どんどん時間たつしチャクラ減るし、麺が伸びるし」
カカシの指摘に蒼かったイルカの頬が今度は一気に朱に染まっていく。
「おっしゃる通りです、先輩さん」
 イルカはガバッと自分の前の丼にかぶりつく。いま初めてラーメンに気がついたかのような慌てようで、ザックリ箸で掬った麺を大口開けてかき込み、結果、まだ冷えてはいない食べ物に舌を焼かれてあちーあちーと騒ぐ。
「騒々しいな。つーか、なんであんたまで『先輩』なの」
「らって、へんぱいのらまえ、ひらないし……」
 ひりつく舌を冷ましたいのか、冷の氷を含んだままイルカが呻く。
「あぁ、名前ね」
 カカシが分厚いチャーシューを箸で持ち上げながら、姓は知ってんだろうに、と返すと、変な感じだから、とボソリと言われる。
「お父上と一緒だと、俺的に変な感じする」
「ふーん」
 そんなものだろうか。イルカはどうも『白い牙』を熱心に敬いがちらしいから、血縁の自分が父親とは主義主張が異なるのを感じとっているのだろう。けれどイルカに父親との違いをどのように思われようと、それはカカシの任務には何の差し支えもないことだった。
 憧憬する人物がそもそも悪いから、イルカのチャクラ安売り癖がこの年までけっきょく治らなかったのではなかろうか。
 そんなことを思いながら、カカシはたぶん半年以上ぶりの『一楽』のラーメンを味わった。


 カシは誘われたからとはいえ格下でろくな貯蓄もない中忍にラーメンの代価を支払わせるつもりはなかったが、奢ってやるつもりも毛頭無かった。自分の飲み食いは自分のチャクラで支払うのが基本だとカカシは考えている。従って、二人分払おうとするイルカを制止、ラーメン代は割り勘で済ませた。
 カカシが面をつけたのは、暖簾をくぐり店の外へ出る直前だ。
 本日の夜間、自宅待機の予定であるイルカはまっすぐに自宅に帰るべきであり、大人しく朝まで塒にこもっていてもらえるなら カカシはもう一人、見張っている危なっかしい子供の元に行き、分身と合流したかった。そんなわけありで、イルカにはつい、寄り道しないで帰れ、などと言ってしまう。なにかと一緒の任務で組んでいる後輩はカカシに言わせれば口をまわしすぎる。いつも一言余計だと感じているが、自分こそ保護者よろしく余計なことを発言し過ぎであった。だいたいカカシを黙っていられなくさせるのがうみのイルカという中忍なのだ。
 今だって何なのだと思う。じゃあな、とイルカの住まいとは逆方向に行きかけたカカシの忍服を、なぜ後ろから掴んでいるのか。
「今度はなに?」
「俺の見張りするって言ってた」
「他にもいくとこあんの。あんたは自宅待機でしょ。帰りな」
「残念。せっかく仲良くなれたのに」
カカシの、なってねー、という突っ込みには聞く耳を持っていなかったらしい。イルカは背中を掴んでいた両手をあっさり放したかと思えば、すかさずあろうことかカカシの面を両側から掴んでくる。
「なにすんだっ」
 カカシは本気でイルカの手を払った。鍵爪は引っ込めたままだったが、腕力はもちろんカカシが勝る。瞬時に打たれてだらりと下がった両腕を、イルカは頭の後ろに組んでゆっくり伸びをした。少しも怯んだ様子はなかった。
「お面しちゃうのもったいねーなって、先輩さん美人だから」
「おかげさまで醜男と言われたことはないな」
「正規部隊で顔出してたら、そのへんのくの一がみんなきゃーきゃー言いそう」
「顔出さなくてもチンコだせば色町のおねーちゃんたちがアンアン言ってるよ」
「きれーな顔のわりに下品」
「悪かったな」
 喋りすぎだ。とカカシは大真面目に感じている。離れ難いというのはこういう感覚なのか。いいや、いちいちイルカが危ういから神経に障ってしかたがないだけのことだ。警告音が何処かでなった気がする。周囲をひっそりと固めている使役らに厭きれた様に鼻を鳴らされた。カカシは目的の場所へ行くために歩き出すが、イルカをまく速度で走り出すまでいかない。イルカはイルカで、カカシの斜め後ろをぴったりと着いてくる。
「おんなのひと、いつも買う?」
「たまに。おまえその年で買ったことないのか?」
「貧困層に遊郭で遊ぶチャクラの余裕なんてない」
「だから貧乏人は堅実な恋愛結婚が多いんだよな。まさかあんた童貞だったりして」
 カカシが揶揄して窺うと、イルカは耳朶を微かに染めて俯いた。
「やらしてくれる知り合いのくの一いないの?」
「やっと任務こなしてギリギリの生活なのに、女の子と付き合うどころじゃない」
「俺もくの一とはご免だけどな。いたしたあとうっかり寝込んでチャクラ取られたりする間抜けいるし。最初からチャクラ奪う目的の女もいる」
 忠告も含めて言ってやると、そういう死に方けっこういいかも、などと返って来るからがっかりした。
「あんたさ、やっぱ早死にしたいの?」
 カカシは初めて助けた際の、頭こそ下げられたが少しも嬉しそうではなかったイルカの様子を回想した。
「ずっとひっかかってた。善意でチャクラを譲ってるにしちゃおまえ、いいかげんばらまき過ぎなんだよ」
 振り向いて襟首を掴み問い詰めてしまう。
「生きたくないのか?」
「それ以前に、忍びに向いてない」
「そんなはずない」
「先輩さんみたいな方に言われても……」
「そんなはずないんだよっ」
 カカシは憤り、特殊部隊にあるまじき冷静さを一瞬失い、声を荒げてしまった。制止する相棒がいまはいない。そればかりが箍が外れる原因でもない。
 この歯痒さはいったい何なのか。不明なまま、生前の師匠を想う。
 カカシの師は時空を制した忍びであった。だから時に翻弄される忍びらの、前途多難な戦の過去も未来も行き来したのだ。そして最悪の未来を避けるため、自らの命を時空に封印した。
 忍びの史上、最も激しい戦争は幾年も後にくる。その時、世界の救世主になる忍びは今現在、まだ何の力もない幼児でしかなかった。カカシはこの中忍が未来の木の葉の頂点に立つ、その忍びの、最初の拠り所になる人物だと知っていた。
 その子供ために、うみのイルカは生き続けなければならない。
 里内では唯一の預言者だった、若くして逝った四代目火影の示した道の途中に、うみのイルカはいるのだ。だから現火影は、うみのイルカの絶命を避けて避けて避け続けてきたのだった。
 道端で中忍の頚を締め上げる暗部の姿は、往来の複数の眼にどう映ったかしれない。けれどカカシははっきりさせずにいられなかった。里長が救えというから救ったが、本人に断固として生き続ける意思がなければ救う甲斐などないではないか。
 カカシはイルカの襟首を捨てるように放し、先の戦時のように逆さにひっくり返し肩に担いだ。
「予定変更だ。一緒に来い」
「どこへ?」
「生きてた方が得って思えること覚えれば考え変わる」
 カカシは疾風になり、走り出す。
 背中の方でイルカが、息できなくなる、とか、苦しいとか唸ったようだったが構わなかった。
「いつ死んでもいいくせに、呼吸が苦しいくらいで文句言うな!」
 カカシはすっかり頭に血が上り、怒鳴りつけていた。

拍手

PR
entry_bottom_w.png
plugin_top_w.png
カレンダー
01 2026/02 03
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
バーコード
plugin_bottom_w.png
plugin_top_w.png
カウンター
plugin_bottom_w.png
Copyright ねこまたぎ by 宇都宮 All Rights Reserved.
Template by テンプレート@忍者ブログ
忍者ブログ [PR]