刻の監視者8 / ねこまたぎ 忍者ブログ

ねこまたぎ

「木葉日」の徒然

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※映画『TIME』ネタでカカイル。

 くの一の死体を片付けに来たのは死体の処理班だった。特殊部隊と似たような装束だが、面は般若を模し外套は灰色だ。
 窓際に胡坐をかいた暗部が処理班に命令口調で幾つか指示めいたことを言っていたから、彼はこの若さで結構な発言力と地位があるらしい。
 処理班は気絶したままだった遊女らをたたき起こして部屋から追い出し、遺体となったくの一を黒い布に包み、畳みや床の血飛沫を殺菌効果もあるらしい彼ら独特の火遁で焼いて白い埃にした。その様子のおおよそを、イルカは『白い牙』の嫡子の後ろから、横たわったまま視ていた。
 視ていたのだが、処理班の手際の良さを事細かに後に回想できるかといえば否だった。横臥のイルカの視野は暗部の背と腰がすぐそこにあるせいで限られていたし、動揺してもいた。
 処理班の眼が何度かイルカを覗ってきた。その度に自分の崩された髪のさんざんなほつれや、裸体のままの姿におざなりにかけてある毛布からはみ出したままの肩や下肢に羞恥を覚えた。肩峰にはいつの間についたのか紅い痣があり、両方の脚の間と腿の後ろには乾きかけの己の精がこびりついていたのだ。
 これから処理班を呼ぶと言われた時、イルカは慌てた。
 暗部に性器ばかりか身体のあちこちを弄くりまわされすっかり腰くだけになっていて、衣服を身に着けるのも逃げ出すこともできずに転がっているしかない状態だったのだ。せめて身体を覆い隠そうと試みた腕さえ思うように操れず、手近にあった布を引き寄せるのが精一杯だった。
 暗部はイルカの気にしている人目などまるでどうでもよいらしく、イルカの身体を処理班の仕事の妨げにならないようそのためだけに部屋の隅に移動した。それもその筈、自分は途中、熱いと呟いて面とベストはさすがに取り払ったが、他は何の乱れもない。着衣のまま、まるで生物学の実験のようにイルカの頭の天辺から足先までつつきまわしただけではなかったか。
 イルカはいったい何をされたのか。性行為ではないのだろう。尻の狭間に異物感が残っているが、犯されたわけでもない。内臓は探られたと思うが性器を挿入されてはいない。そこを掻き回してきた指を焼けた火箸のようだと感じながら噴き上げたのが三度目で、それを最後に暗部はイルカの解剖に厭きたのだろう、自分の性器を取り出しイルカが視ている前で平然と自慰をした。
 なにかのついでのように。べつものの排泄のように息を荒げることもなく。自分の掌に溜まった精を拭う様子もまるで自然流れ出た汗を拭いたように淡々としていた。
 けれど口では、おまえやばい、と非常に苦々しく言った。まずいな、とも言われたが、具体的に何を指してヤバクてマズイのか、イルカには分からなかったし暗部から語られることはなかった。
 自分の短所はエリートから見れば大量にあるだろう。あり過ぎてうんざりする欠点や能力の低さを並べられてもイルカも辟易するだけだ。問い詰める気力もわいてこなかった。
 処理班が仕事を片付ける間に空は秒刻みで明るくなっていった。背中から日の光を浴びる白い牙の血を引く獣はイルカの眼前で排泄器官を曝したというのに何事もなかったように冷然と、変わらぬ美しい面差しで処理班が一礼して出て行くのに頷いた。
 イルカはまだこの半日のうちに自分の身に起きた全てのことを消化し切れていなかったのだろう。混乱している頭を整えようと記憶を遡れば、暗部に身体中を探られたことも反芻する羽目になるから回想が躊躇われた。ゆえに事実の整理を放棄した。 
 それでも現実感とはほど遠いこの体験は、暗部の計画通りにはいかずとも、イルカの希薄な生存本能に少しだけ変化をもたらした。
 動物的な快楽はいつかイルカの中で形骸化していったにも関わらず、彼に操作されたチャクラの増減の感覚は特殊で特別で忘れられない体感としていつまでも生々しく消えることはなかったからだ。
 彼とのチャクラのやり取りは、誰とするより熱くて気持ちよかった。またあの感覚を味わいたいと思うほど。
 もう一度味わいたいものは、他にもあった。
 残念ながら、その日以来、先輩さんはイルカの監視にやって来ることはなかったが──。
 だからその後イルカは生き延びようと努力したのかもしれない。いつか彼と会いたいがため。
 イルカの前に現れる刻の監視員は猫面のみになっていた。猫面はイルカを監視する任務を遂行するだけで余計な会話はしない。イルカが誘っても並んでラーメンを食べることはなかったし、イルカの予定を変えることもない。先輩さんのことを尋ねても一切応えない。
 歳月を経て再会の仄かな期待が薄れた頃、イルカはミズキとともに教員試験に合格し、チャクラの月毎の安定支給が受けられるようになっていた。
 

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