ねこまたぎ
「木葉日」の徒然
2009.12.21
イルカはカカシに強いられるのが好きだった。
風呂場の天井に白々とした明かりが張り付いている筈なのだが、視覚はひどくぼやけ光源の在り処がはっきりとしない。浴槽から立つ湯気のせいなのか、眼球の表面に涙液が溜まっているせいなのか、カカシが愛しすぎて眩しいせいなのか。
彼は数多の同胞の憧憬の的だった。そんな人が同性のイルカを恋人にしていることは周囲にちらちらと広まりつつあるようだった。こそばゆく恥ずかしかったが、いつかすべての人に認めてもらえたなら幸せだろう。自分は男なのでカカシの伴侶としてそんな日がくることはない。わかっていたが、どうしても夢見がちに望んでしまう。
これが夢でも良い、と思う。夢なら哀しい、とも。
腿の狭間の秘部を貫いている雄芯の強さがたまらない。涙が出るほど気持ちが良い。嬉しい。
粘膜はカカシの指でだいぶほぐされていた。指の腹とは異なる刺激を与えられると、内臓は男の肉の形に合わせてまた弛む。押し入られるとどこまでも吸い込もうと弛緩する。
もっと弛むのは頭のネジだった。カカシになら何をされても良かった。促されればなんでもした。
自分でしてと言われれば排泄孔に己の指も突っ込んだ。視たいと請われれば玩具で自慰もしてみせた。
けれどカカシを喜ばせるため懸命に尻を振っても、ふと見上げたその瞬間に彼が言葉で可愛い、良い眺め、と讃えるほどには悦んでいない時がある。
カカシの猛々しい陰茎は充分に漲ってはいたし、気がそぞろというのでもない。空いた手でイルカの胸の突き出てしまった小さな肉芽を忘れずに弾いてくれるし、股間で先走る雄も宥めてくれる。
それなのに眼は自分を通り越し違う何かを見ているような感じがしてならない。もしかすると自分に飽き、他の誰かに心が移っているのかもしれなかった。
イルカはそのように感じた時は、後ろからして欲しいと強請ることにしている。彼の視界にいるのに自分だけを視ていない眼と、彼だけを視る自分の眼が間近で合う時の虚しい感覚が嫌だった。
だから浴室の硬い床に膝をつき、四足の獣になって穿たれている。
丸みのある先端に叩かれる。張った鰓には抉られ反った角度に圧搾される。凶器のように内壁を犯しながら、カカシはイルカの淫らな腺を的確になぶる。眩むような快感に満たされる。男の腿の厚い筋肉が、深い侵入とともにイルカの尻を仕置きのようにパシリと叩く。痛みさえ快楽の中枢を刺激したのだろうか。イルカは不意に上りつめていた。
濁った白色が迸る。同時に力が抜け崩れる腰を掴んだ強い腕の力で引き上げられる。肉の狭間に刺さった雄もイルカが伏せてしまうのを許さぬようにより深く食い込んでくる。その硬さと逞しさはイルカを秘部から支えて更に揺さぶった。
離さないでと願う前に、望みが叶って困惑する。
惑いながらも果てたばかりの芯が残滓を撒き散らして反応しそうになる。内部をすべて攫うように腰をまわされ甘い痺れがそこからジクジクと広がり粘膜が痙攣する。
こんなに熱心な愛撫を施す人が、他の人に移り気でいるとは考えにくい。考えたくなかった。
愛想を尽かされる予感や不安は打ち込まれる楔に払拭された。
背中に張り付く彼の胸は温かかった。汗ばんでもいた。体内で脈打つ彼の楔も膨張し沸点を超えようとしている。熱い迸りが注がれたその瞬間に、イルカは声にした。
──嫌わないで。
カカシはイルカをバスタオルでくるみ、風呂場から横抱きにして運んでくると、そっとベッドの上に下ろしてくれた。セックスの時は容赦がないことが多いが、他はほとんどイルカは壊れ物扱いされている気がする。床に脱ぎ散らかしてあった服を片付けようとしたら、こっちが先、と裸のままで濡れた頭髪をフェイスタオルでマッサージするように拭き始めた。自分も髪は洗って濡れたままだが、イルカの髪が先らしい。拭う指は丁寧で穏やかだ。
同じ手がドライヤーのプラグをコンセントに入れる。電源スイッチを押す。熱風が髪を、耳を、頬を吹くので眼を閉じた。櫛まで持ち出してイルカの肩までの黒髪を大事に梳いてくれるから、まだ嫌われていない、大丈夫と思う。
「さっきの、嫌わないでって、なんだったんですか?」
風の合間にカカシの声がした。
「そのままです。俺を、嫌いにならないでください……」
答えて薄目を開けカカシを覗うと、ドライヤーの風をイルカに当てながらあからさまに驚いた顔をした。
「イルカ先生を? 嫌わないですよ。なんでそんなこと言うの?」
見開かれたカカシの眼が伏せがちに戻る。ドライヤーの電源がオフになる。コードを無造作に巻き取るとふいとカカシは洗面所に行ってしまった。ドライヤーを片付けに行っただけだろうに、イルカの答えなどどうでもいいように見えて焦る。
洗面所から戻ってきたカカシはクローゼットを開けて二人分のパジャマを出してきた。イルカが泊まりに来ると貸してくれるカカシと色違いの細かな格子柄のものだ。イルカにブルーの方を手渡してきて、カカシはグレーの方を履く。
イルカもベッドに腰掛けたまま渡されたパジャマに袖を通す。カカシが前ボタンをとめるのを眺める。すらりとした形の良い指が、あの逞しい長い腕が、広くて温かい胸が、自分以外の誰かのものになるのを想像するとやるせなかった。
そうだった。誰かの代わりに抱かれているような気がするのだ。
これは言っても良いことなのか。もしもそうだとしても少なくとも今はまだ恋人の待遇なのに、どんな言い方をしてもカカシを不機嫌にするような気がして思うそのままは口にできなかった。
「あの、もしもですよ、もしも他にカカシさんに好きな方ができたら、俺、諦めますから言ってください」
「他の人なんて、イルカ先生以外の誰かなんて好きになるわけないでしょうあなただけですよ。俺の愛情疑うなんてひどいな」
まるでたたみかけるようにカカシは言う。苛ついたようにも聞こえてイルカの肩は自然竦んでしまった。
「疑われるようじゃ、俺の愛し方が足りないんですね」
前に立ったカカシがイルカの肩をトンと押した。強い力ではなかったが不意打ちでイルカは後ろに傾いでいた。身体の脇についた両肘が自分の体重を受けてベッドに浅く沈む。カカシを見上げると口端が苦々しげに歪んでいるようだった。
「もっと愛してあげないと、わかってもらえないね。今日はもう寝かせてあげようと思ってたけど……」
留めたばかりのパジャマのボタンをカカシの手が性急に外していく。下着はつけていなかったから下などあっという間に剥かれてしまった。まだ湯上りで、交わった後の火照りの残る皮膚の体温がもとより格段にあがる。カカシが舐めるように上から下まで視線を這わすからだ。
「あ、あの、お、俺の勘違いならいいんですけど。あなたに嫌われないようにしたいけど、どういう風にしていればいいかわからなくて……」
「それは俺に嫌われないためなら何でもしてくれるってことですか?」
イルカは迷うことなく頷いている。これまでだってカカシの要求にはすべて応じてきた。どんなに恥ずかしいことをされても堪えて、そして最後には気持ちよくなれた。
そう、と言って、カカシはベッドのヘッドボードから潤滑剤のチューブを取り出す。
「脚、開いて」
言われるままにイルカは座った姿勢で素足を外に向ける。当然性器は剥き出しのままカカシの視線に曝される。後孔にいやというほど、溢れるほど注がれるであろうとろみを覚悟したが、冷たいゲルはほんの少し、指先にのる程度の量を先端に垂らされただけだった。
2009.12.21
風呂場の天井に白々とした明かりが張り付いている筈なのだが、視覚はひどくぼやけ光源の在り処がはっきりとしない。浴槽から立つ湯気のせいなのか、眼球の表面に涙液が溜まっているせいなのか、カカシが愛しすぎて眩しいせいなのか。
彼は数多の同胞の憧憬の的だった。そんな人が同性のイルカを恋人にしていることは周囲にちらちらと広まりつつあるようだった。こそばゆく恥ずかしかったが、いつかすべての人に認めてもらえたなら幸せだろう。自分は男なのでカカシの伴侶としてそんな日がくることはない。わかっていたが、どうしても夢見がちに望んでしまう。
これが夢でも良い、と思う。夢なら哀しい、とも。
腿の狭間の秘部を貫いている雄芯の強さがたまらない。涙が出るほど気持ちが良い。嬉しい。
粘膜はカカシの指でだいぶほぐされていた。指の腹とは異なる刺激を与えられると、内臓は男の肉の形に合わせてまた弛む。押し入られるとどこまでも吸い込もうと弛緩する。
もっと弛むのは頭のネジだった。カカシになら何をされても良かった。促されればなんでもした。
自分でしてと言われれば排泄孔に己の指も突っ込んだ。視たいと請われれば玩具で自慰もしてみせた。
けれどカカシを喜ばせるため懸命に尻を振っても、ふと見上げたその瞬間に彼が言葉で可愛い、良い眺め、と讃えるほどには悦んでいない時がある。
カカシの猛々しい陰茎は充分に漲ってはいたし、気がそぞろというのでもない。空いた手でイルカの胸の突き出てしまった小さな肉芽を忘れずに弾いてくれるし、股間で先走る雄も宥めてくれる。
それなのに眼は自分を通り越し違う何かを見ているような感じがしてならない。もしかすると自分に飽き、他の誰かに心が移っているのかもしれなかった。
イルカはそのように感じた時は、後ろからして欲しいと強請ることにしている。彼の視界にいるのに自分だけを視ていない眼と、彼だけを視る自分の眼が間近で合う時の虚しい感覚が嫌だった。
だから浴室の硬い床に膝をつき、四足の獣になって穿たれている。
丸みのある先端に叩かれる。張った鰓には抉られ反った角度に圧搾される。凶器のように内壁を犯しながら、カカシはイルカの淫らな腺を的確になぶる。眩むような快感に満たされる。男の腿の厚い筋肉が、深い侵入とともにイルカの尻を仕置きのようにパシリと叩く。痛みさえ快楽の中枢を刺激したのだろうか。イルカは不意に上りつめていた。
濁った白色が迸る。同時に力が抜け崩れる腰を掴んだ強い腕の力で引き上げられる。肉の狭間に刺さった雄もイルカが伏せてしまうのを許さぬようにより深く食い込んでくる。その硬さと逞しさはイルカを秘部から支えて更に揺さぶった。
離さないでと願う前に、望みが叶って困惑する。
惑いながらも果てたばかりの芯が残滓を撒き散らして反応しそうになる。内部をすべて攫うように腰をまわされ甘い痺れがそこからジクジクと広がり粘膜が痙攣する。
こんなに熱心な愛撫を施す人が、他の人に移り気でいるとは考えにくい。考えたくなかった。
愛想を尽かされる予感や不安は打ち込まれる楔に払拭された。
背中に張り付く彼の胸は温かかった。汗ばんでもいた。体内で脈打つ彼の楔も膨張し沸点を超えようとしている。熱い迸りが注がれたその瞬間に、イルカは声にした。
──嫌わないで。
カカシはイルカをバスタオルでくるみ、風呂場から横抱きにして運んでくると、そっとベッドの上に下ろしてくれた。セックスの時は容赦がないことが多いが、他はほとんどイルカは壊れ物扱いされている気がする。床に脱ぎ散らかしてあった服を片付けようとしたら、こっちが先、と裸のままで濡れた頭髪をフェイスタオルでマッサージするように拭き始めた。自分も髪は洗って濡れたままだが、イルカの髪が先らしい。拭う指は丁寧で穏やかだ。
同じ手がドライヤーのプラグをコンセントに入れる。電源スイッチを押す。熱風が髪を、耳を、頬を吹くので眼を閉じた。櫛まで持ち出してイルカの肩までの黒髪を大事に梳いてくれるから、まだ嫌われていない、大丈夫と思う。
「さっきの、嫌わないでって、なんだったんですか?」
風の合間にカカシの声がした。
「そのままです。俺を、嫌いにならないでください……」
答えて薄目を開けカカシを覗うと、ドライヤーの風をイルカに当てながらあからさまに驚いた顔をした。
「イルカ先生を? 嫌わないですよ。なんでそんなこと言うの?」
見開かれたカカシの眼が伏せがちに戻る。ドライヤーの電源がオフになる。コードを無造作に巻き取るとふいとカカシは洗面所に行ってしまった。ドライヤーを片付けに行っただけだろうに、イルカの答えなどどうでもいいように見えて焦る。
洗面所から戻ってきたカカシはクローゼットを開けて二人分のパジャマを出してきた。イルカが泊まりに来ると貸してくれるカカシと色違いの細かな格子柄のものだ。イルカにブルーの方を手渡してきて、カカシはグレーの方を履く。
イルカもベッドに腰掛けたまま渡されたパジャマに袖を通す。カカシが前ボタンをとめるのを眺める。すらりとした形の良い指が、あの逞しい長い腕が、広くて温かい胸が、自分以外の誰かのものになるのを想像するとやるせなかった。
そうだった。誰かの代わりに抱かれているような気がするのだ。
これは言っても良いことなのか。もしもそうだとしても少なくとも今はまだ恋人の待遇なのに、どんな言い方をしてもカカシを不機嫌にするような気がして思うそのままは口にできなかった。
「あの、もしもですよ、もしも他にカカシさんに好きな方ができたら、俺、諦めますから言ってください」
「他の人なんて、イルカ先生以外の誰かなんて好きになるわけないでしょうあなただけですよ。俺の愛情疑うなんてひどいな」
まるでたたみかけるようにカカシは言う。苛ついたようにも聞こえてイルカの肩は自然竦んでしまった。
「疑われるようじゃ、俺の愛し方が足りないんですね」
前に立ったカカシがイルカの肩をトンと押した。強い力ではなかったが不意打ちでイルカは後ろに傾いでいた。身体の脇についた両肘が自分の体重を受けてベッドに浅く沈む。カカシを見上げると口端が苦々しげに歪んでいるようだった。
「もっと愛してあげないと、わかってもらえないね。今日はもう寝かせてあげようと思ってたけど……」
留めたばかりのパジャマのボタンをカカシの手が性急に外していく。下着はつけていなかったから下などあっという間に剥かれてしまった。まだ湯上りで、交わった後の火照りの残る皮膚の体温がもとより格段にあがる。カカシが舐めるように上から下まで視線を這わすからだ。
「あ、あの、お、俺の勘違いならいいんですけど。あなたに嫌われないようにしたいけど、どういう風にしていればいいかわからなくて……」
「それは俺に嫌われないためなら何でもしてくれるってことですか?」
イルカは迷うことなく頷いている。これまでだってカカシの要求にはすべて応じてきた。どんなに恥ずかしいことをされても堪えて、そして最後には気持ちよくなれた。
そう、と言って、カカシはベッドのヘッドボードから潤滑剤のチューブを取り出す。
「脚、開いて」
言われるままにイルカは座った姿勢で素足を外に向ける。当然性器は剥き出しのままカカシの視線に曝される。後孔にいやというほど、溢れるほど注がれるであろうとろみを覚悟したが、冷たいゲルはほんの少し、指先にのる程度の量を先端に垂らされただけだった。
2009.12.21
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