ねこまたぎ
「木葉日」の徒然
2009.12.27
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濡らされたのは少しばかりの面積だ。 けれどそこは放出の余韻が残る出口であった。 カカシの指が濡れた裂け目に軽く触れる。ひと撫でされただけで冷たい無機物が高い温度の雫にすり替わる。 まだ項垂れ気味の芯の根元を起こすように掴まれる。カカシの眼は手元を、イルカの局部を凝視している。それは繋がるために施す前戯の時と異なる眼つきでまるで何かを試すような、興味深そうな観察者の眼だった。そのような好奇を含んだ視線を当てられては息がつまりそうになる。 それでも敏感なとば口を爪で弱く掻かれる刺激にイルカは従順に反応した。震えながら膨張する淫らな性器が恥ずかしい。思わず閉じた両の膝頭をカカシの手が制して下肢はもとより大きく割られてしまう。グイと広く開かれた内腿の正中で、先を濡らすものの温度がまた上がる。量まで増えてしまう。イルカの内部から染み出た淫汁がゼリーと融け合ったのだろう。 「そのまま、手は後ろについてて、逃げたら駄目ですよ」 俺を好きでしょう、と確認され、イルカには縦に頷く他の応えが返せない。座ったまま後ろに手をつき、開脚した姿勢でカカシの次の動作を待った。 カカシは潤滑剤を出したのと同じ場所を探っている。数秒ののち縦長の包装を引っ張り出していた。きっと新しい性具に違いなかった。 イルカはカカシが喜んでくれるなら良かった。嫌われないためならば、グロテスクな突起がついていても、凶悪な動きをするものでも恐れや羞恥を堪える覚悟で玩具の包装を破るカカシを見守る。ところが現れたそれには気味の悪い疣も電源のコードも着いていなかった。細く柔らかにシーツに向けて垂れ下がっているだけの、大人の前腕くらいの丈をした紐だ。いや両端に孔があるので筒のようだ。半透明だからシリコン製であろう。直腸内をいたぶるにはやけに細すぎる。肌を鞭打つには柄がついていない。どこかで視たことがある代物だが正しい名をイルカは知らない。 名は知らぬが用途と垣間見た場所が何処かは思い至った。白い壁と白い天井の、薬品の匂いが充満する建物の中だ。動けぬ傷病者に使われる衛生材料の調達先や、なぜこれかと理由を問う隙はない。イルカに有無を言わせぬ素早さでカカシの右手は管を摘み、左手でイルカの性器を掴みなおしている。しっかりと上向けに固定される。頂上の割れ目に管の端が近付けられる。 イルカはカカシが何をしようとしているか悟った途端さすがに腰が退けた。後ろからならいろいろな無機物を押し込まれてきたが、前から何かを入れられるのは初めてだったのだ。恐れにならい萎みかける幹を、カカシの手は握りつぶすような強さで縦に引き上げ口端だけで苦笑した。 「……萎えちゃったね。怖いの? でもたぶん硬くしてるより入れやすいと思うからちょうどいい」 言って細い管のほんの先で尿道口をつく。狭い孔の内壁をほじるように差し込まれてしまう。 「いっ……!」 悲鳴をあげるつもりはなかったのに、自然弱音が苦痛の呻きとなり固定されている場所以外がガクガクと慄いた。 「全部入るまではちょっと痛いかも……」 管の挿入は一気には進まない。押し込まれた半分は、直後にズルリと抜け出てしまう。カカシは是が非でも全部入れるつもりらしく、痛みを堪え泣き面になりそうなイルカを気遣う風に見遣りはするが、手の動きを止めはしない。 閊えてしまうのも楽しんでいるのか、浅い場所で不意にグルリと丸くまわしてみては、捻りながら外へと退く。そうかと思うとまたつつく。中途まで潜らせておき、勢い抜かれるとその度に薄く弱い粘膜が軋む。イルカは喉で唸りをあげた。 「まだ痛いんだ?」 イルカの脚の間で胡坐をかくカカシは意外そうに訊いてくる。 痛くないわけがない。通常は表面麻酔薬を使うべき代物なのだ。性交時の潤滑剤くらいで奥まで入るのか不明であった。それでもカカシがしたいのならば我慢するしかなくて、局所の拷問に懸命に耐える。 半端な抜き差しが繰り返される。出し入れされると柔な道筋は鑢でこそげとられるようだ。熱傷時に感じるような、焼かれるような激痛に姿勢を保っていられない。上体を支えていた腕が力を失くしてシーツの上をズルズルと後ろに滑ってしまう。 気がつくと冷汗に湿る背でベッドをギシギシと軋ませている。疼痛から一時でも逃れるように、弓なりに反る背面で、肩甲骨が寝台を押し窪ませていく。 いつしか執拗にほじられる小孔の感覚が慢性化してきたようだった。気が遠くなってきたのかもしれない。 それでもそれは完全な無痛には遠く、鈍い圧痛が裂け目を焦がすから気絶もできずに身を捩る。自分の息の荒さが断末魔の獣のようだった。 カカシは異物の挿入に執心しながら、何かをやっと思い出したように、ああ、そうか、と言った。 「──あの時は、下も一緒だったっけ」 ねぇ、と同意を求められたが、カカシの言うあの時がどの時かイルカはわからない。 カカシは何事かを回想しているようで、数秒間、物思いに耽るように眼を閉じていた。伏せられたた瞼が、ゆっくり開かれた時、カカシの色違いの双眸は何かに憑かれたように爛々とぎらついていた。欲望顕と言うのでもなく、怒りでもないようだった。 カカシの手はイルカに異物を突き刺したままふと離れてしまう。ガタガタと頭の上の抽斗を再び探って引っ張り出したのはイルカの内臓にだいぶ馴染んできた男性器を模した玩具の一つで、疣はないが鎌首の部分が回転をするものだった。 「ごめんね。後ろを気持ちよくしてあげれば良いんだった……」 まるでそれをイルカが待ち望んでいたように、待っててと殊更優しく言われ、ゼリーを纏わせた太い玩具を後孔にひと息に詰められる。衝撃で顎があがる。内腿が攣る。それでもカカシの性器で弛んでいた内臓は柔軟に伸びほとんど痛みもなく受け入れていた。 カチリと音がした。次いで控えめなモーター音が鳴り始めるとイルカは身悶えせずにいられなくなった。直腸内で動き始めた偽の性器が敏感なしこりをグリグリと圧迫するから、これには反応せずに済まない。体内は尿道の異物感など忘れるくらいの快感に満たされていく。休みなく襲い来る刺激に縮んでいた前が徐々に芯を持つ。陰茎の根元の奥底からは熱いものが滾々と湧いてくる。 異物の隙から喜悦の分泌がタラリと洩れた。こぼれた先走りが腹にも垂れる。 「ああ、やっぱりこんなに濡れてきた」 もう痛くない筈だから、と言ってカカシの指が前の異物を奥へと進ませる。進ませながらグリグリと回される。 粘液で満たされた道筋はカカシの加える力に従い旋回する管をヌルヌルと呑んでいく。 「っ、あっ、あああっ……っ」 異物感に喘いだが焼かれるような痛みはなくなっていた。代わりにイルカの尿道に染みてきたのは異様な疼きであった。後ろと違い射精に直結する快感では決してない筈なのに、擦られる粘膜が言い表せない感覚を呼ぶ。近い表現をするならば、ひたすらにもどかしい。 カカシは膝頭で電動式の玩具が抜けないように押していた。そうしながら両手は前の孔をいたぶる事に執心している。深く差し込んだのをいきなりズルリと引き出して、濡れ具合を検分するように管の側面をイルカの粘液とともに舐めとり悦に入った表情をする。そんなに嬉しそうな顔をされたら、こんな愛され方は本当は嫌だというまともに近い感性はイルカの中で霧散した。 もとより前立腺をしつこく刺激され、前の潤いは尋常ではなくなっている。もう尿道は入り口でも出口でもなく、直腸と同じ、ただカカシの愛撫を受けるための性的な器官の一つに過ぎない。 カカシに変えられて行くのを恐ろしいとは思わなかった。何をされても結局は許せるほど愛しているのだと、自分の思いの深さを誇りにさえ感じている。 だから捨てないで欲しい。飽きないで欲しい。他の誰も見ないで欲しい。 (どんな辱めも堪えてあなたを喜ばせてみせるから……) カカシを繋ぐ術を自分は他に何も持っていない。それだけが今のイルカにとって、術中のイルカにとっては真の苦痛なのだった。 グチグチと出入りする管の摩擦が内臓を犯す振動を増幅させる。イルカを骨の髄から淫猥な渦に落とし込む。尿道をくじるカカシの速度に焦れるほどに、直腸で暴れる器具の動きが弱く感じるほどに貪婪に髪振り乱して腰を浮かし、もっと酷くして欲しい、もっとひどくしていいと訴える。 「……良い子だね。なんでそんなに素直なの?」 好きだから、と答えると、カカシはあの何かに憑かれたような眼でイルカを見下ろしている。 「俺が? それともここが好きになった?」 示された鈴口が管の抜き差しにグチリと粘る。性感帯と化した狭い粘膜内で、細軸の淫具を操作される。届くわけもないのに膀胱も精嚢も掻きまわされているかのような、何もかもグチャグチャに乱されて、自分自身がドロドロの淫液と化してしまったように被虐的な感覚を貪りつくしながら、あなたが好きだから、とやっと言う。 「そう。でも此処も前から好きだったでしょう。あの時もそりゃ盛大にいったんだから……」 またイルカには覚えのないことをカカシは口走る。それは自分じゃない、と言おうにも、どの口もいやらしいと詰られて、言葉の出口も塞がれる。 舌で舌を引き出され、そこからも官能を吸い上げられる。こみ上げて来る絶頂感を満たして欲しくて脚をカカシの腰に絡め、カカシの性器を請う。 押し付けた股間でカカシの手がつかえ、異物は変に捩れたがそれすらイルカを煽る。 離れたカカシの口唇は、イルカの唾液で濡れていた。 「俺が欲しい?」 問われてイルカはもちろん頷いている。 「じゃあもう俺の気持ちを疑わないで、いっぱいあげるから」 イルカは巣くってしまった疑念を打ち消すように幾度も頷いた。心も身体も明け渡している証にこれ以上は開かぬ角度に脚を開き、持ち上げる。カカシ自身を誘う。 願った通りに玩具を除かれ、カカシの肉に満たされた。玩具と異なり粘膜に密着するそれは堕落した腺の貪欲さを上回る勢いでイルカを犯す。 後ろの衝撃と淫靡さは全身をとろかすようだった。狂うような快感に咆哮した。数度突かれただけで押し寄せた絶頂に頭がくらくらとした。 噴き上げた精液はカカシの腹を汚し、それから尿道を埋めていた異物を押し出した。股の中心で勢い排泄された管の、のたうつように飛び出した様の卑猥さにうろたえたが長く動揺してはいられなかった。 イルカがいってもカカシの躍動は止んでいない。腰が砕けるほどに挑まれて、そのまま更にイルカが果てるまで交わりは終らなかった。 |
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