刻の監視者5 / ねこまたぎ 忍者ブログ

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「木葉日」の徒然

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※映画『TIME』ネタでカカイル。

 左腕が熱い。痺れを伴う異様な熱さがイルカの掌を焼く。狗のチャクラは任務を命じる上司等のものより熱いと思う。任務の前に、必要だからと最低限支給される、もらい慣れた任務のためのものとは何かが違う。
 これはおかしなことだった。多少質の違いはあれど、それは性格や容姿が異なっているのと同様で、忍びのチャクラには変わりがないはずなのだ。
「どれだけ欲しい?」
 再び暗部が言う。イルカの前腕で明滅する数は、苛烈な熱の勢いとは裏腹に、じりじりとゆっくりと増えていく。
 暗部は十数分毎に一度、確認しながらチャクラを渡してくる。もういいか。もっとなのか、と。
 イルカは自分の腕の数値が増え続ける現象よりも、握られた掌から血脈を無視して起きている拍動に眼を見張る。
 狗のチャクラは刺激が強いのだ。戦火の時より遥かにのろい速度であるのにも関わらず、前腕が風船のように膨らむのではないかと思われた。が、別段、腕は膨張してはいない。破裂もしないだろう。なのにイルカは斜めに仰のいたまま、腕が壊れる想像をした。
 この暗部のチャクラで自分の腕がいっぱいになり、飽和して、なぜか使い物にならなくなるイメージが過ぎって仕方が無い。
 そこに恐怖はなかった。嫌悪もない。それでも腕が激しく脈打つとともに冷静ではいられなくなった。腕の感覚が胸郭まで伝わって、肋骨の内側で心臓が跳ねはじめる。
「朝までここにいるか」
 自問にも聞こえた暗部の声に、ぞろりと全身に鳥肌がたった。イルカの制止がないままに、イルカの時間は十二時間も増えている。過分な譲渡に気がつき、慌てて暗部の手を払った時には腰から足先までの重くだるい感覚に動揺した。
「……またこんなにっ! 返す」
 イルカは半身を起こしかけていた暗部の手を捕まえようとしたが、軽く避けられてしまう。
「奢るって言っただろ」
 暗部の肩の真後ろからは、三人分の女性の視線が無遠慮にイルカを観察していた。一般人には解せない仕組みのチャクラのやり取りに、興味津々なのかと思いきや、彼女等の焦点は忍びの腕ではなかった。イルカの性器が膨らんでいるのを見て喜んでいる。笑ったのは三人のうちの誰なのか。控えめだがあがった黄色い声音は紛れもない歓声で、その歓声とともにイルカが浴びたのは三様、六本の手の攻撃だった。
 可愛らしいと言われた。これもどの女性の声かわからなかったし、特定できなくてもよかった。可愛いと言われている評価の対象が、イルカの容貌ではなく足の付け根で上向いている雄芯であることがただ衝撃で、おまけにそれを布地の上から生まれて初めて他人に探られている羞恥に声が出ない。
 イルカが惚けている間にベストを剥かれてしまう。アンダーと帷子越しに掌をはわされているうちに、胴回りのベルトが引き抜かれて畳に滑っていった。腰まわりの装備も馴れた技術者が部品でも解体するような素早さで、次から次へと剥ぎ取られてしまう。
 めくりあげられたアンダーシャツの裾から複数の指先がわき腹や胸を爪弾いた。下衣が引き下げられ腿まで空気に曝された。足首の方では脚絆の細いサラシがぐるぐると宙で円を描いてほどかれている。土踏まずに濡れた感触がした。裸足の足底を舐めぬぶられているらしい。下着を持ち上げる芯も薄い生地を介してぞろぞろと撫でられる。 
 イルカは混乱していた。恥ずかしさはともかくとして、その前に、女性たちに触れられてもいないうちから興奮していた自身が信じられない。期待だけで興奮するほど、彼女等に何かを感じていなかった。色香に溢れた体躯に煽られた感はまったくなかったのだ。ひょっとすると暗部に操られているのかもしれない。これは幻術なのかもしず、遊ばれているのかもしれなかった。
 イルカをからかっているにしては、大真面目で冷静な暗部の声が届く。
「自宅待機は解除しといてやったから、足腰立たなくなってもいいぞ」
 狗の面がすいと後退して遠ざかるのを、イルカは冷やりとした心地で眼で追った。右側に一人、真上に一人、足元に一人と、三人の女性にまるで襲われたような有様でイルカはやっと声を出す。
「せん……あ、あんぶっ……」
 腫れた性器が覆いの薄布から解放されていた。咄嗟に腿を捩り合わせるが、構造上隠し果せない部分は湿った息を浴びている。
「なに情けない声出してる。朝になったら迎えに来てやるよ」
 俺って親切過ぎ、とおどける肩がゆっくりと角度をかえながらグンと高くなる。立ちあがったのだ。下足をつけていない裸の足が踵を返している。衝立の向こうに忍刀を斜めに着けた背が消えてしまう。
 柔らかで濡れたものにチロリと幹を撫でられた。舌で舐められているらしい。そんなことをされたら感激するかと空想したことがなくもなかったが、現実を直視して楽しむ余裕は今のイルカには皆無であった。口腔内に吸い込まれるねっとりとした技も、上下に扱かれる直接的な煽りさえ、他人が施されているのを眺めてでもいるような空々しい性感になっている。
「まって、せんぱい、まっ……」
 イルカは声を振り絞った。このお膳立てに不快を感じていたわけではなく、ただ独り置いていかれることに、強烈な怖気が走っていたからだ。
 格子戸の外から差し込むのは、落日の黄色く長く鈍い光りだ。夕暮れの逆光を背にした異性達全員の顔が、当然の如く真っ黒な陰の中に融けていた。
 可愛い子、と三人の内の一人が言う。それぞれの声が聞き分けできずにいるのは、イルカが彼女等に興味がないからだろう。
 暗部が部屋を出て行く時の引き戸の開閉音は、ずいぶんと遠いところで鳴った。


2012.06.03初出

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